有名アーティストが使っている機材

「○●という機材はxxさんが使ってると海外のフォーラムで発表されたのでこれを使えば目指す音になりますか?


エンドースは、殆どの場合は楽器店、メーカーが有名人に使用してもらうとうたい文句にして、売ろうとしているだけなのです!!勿論、中には良質な製品も沢山ありますが、エンドースとはどのくらいの使用頻度か皆様ご存知なのだろうか?


有名ギタリストであれば家には100本以上ギターがあり、お気に入りはせいぜい5−6本くらいであろう。断らない限りはメーカーから毎日のように新しい楽器や機材が送られてくるのだ。メーカーとの関係を良好に保つ為に頑張って機会があれば使うアーティストも勿論居るとは思うが、殆どの場合は物置に眠る楽器が沢山出てくる。


プラグインに関しても同じだと思う。


例えば、この程度の使用頻度でも、有名人が使っていれば「代表ユーザー」となり、広告塔となる訳だ。


1)何度か使用したが、結局バイパスにすることが多い
2)もらったから持っているが殆ど使用していない。別の製品の方がよく使っている



アーティスト/エンジニア側も、それによって自己宣伝になるから誰も気にしないし、むしろありがたい。企業側はその方法により、有名アーティストのファンからの購入を狙っている。それが悪い事だとは思わないが、ユーザーが使用するときにはその事も留意しておいたほうがよいと思う。


xxさんが使っています!と企業側が商売のうたい文句にしていても、その本人にどうやって使っているかを聞かない限り、彼らがどうやって使うかはわからないし、彼らが説明してくれたとしても、いくつものチップスの中の一部しかシェアできないであろう。xxさんが使っている○●という機材を自分のプロジェクトに使い、音に満足感を得る為には、耳でしっかり聞いて創意工夫し、試していって自分なりの方法を編み出すしかないのである。


逆に言えば、そのあこがれのアーティストの音にはならなかったとしても自分の耳で、違う方法で音質に満足を得られる方法は開拓すればいく通りでもあるのである。

ソフトウェアのアップデート

ソフトウェアの会社はアップデートの収入に頼っている為、毎年のように改善をし、アップデートする。コンピュータ側のOSアップデートに伴い、各会社はその互換性への対応に追われる。そのため、新しいバージョンへupgradeするのは必然とユーザー側にとっても必須になる。初期費用がハードウェアに比べて多くないので文句を言えるような事ではないのかもしれないが、モノが増えれば増えるほどそれを全てupdateすればそれなりのお金がかかる。


バークリーに入学した時は、学科で必須なソフトウェアは一式、学割強制購入した。その後のupdate金額は、学校を卒業すると一気に学校に居たときのような学割特権がなくなってしまう。学生の時に使っていたソフトウェアはこういった理由でupdateを諦めたものもある。年々、仕事のスタイルに合わせて必要なものは購入しているが、結局のところどこかで使うべきものと使わないものは選別しなければならない。特に、パッケージで配布されているもののupdateは滞る。シリアルナンバーなど必要な情報が説明書の内側だとかとても分かりにくい場所に書いてあったため、引っ越しなどで捨てたくても捨てられなかったりで大変不便である。


ソフトウェアのアップデートによる負担は金銭だけではない。音源がよくなると、必ずCPUに負荷がかかるため、耳あたりのよい音源を使っていてもコンピュータのスペックが年々追いつかなくなる。音源の魅力は理解できるが作業効率を悪くするアップデートをやったところでそのメリットは殆どない。新しい音源に手を出して作品を作って失敗する人の原因は特にこういうところにある。


ギターアンプのシュミレーターなんかは特に、改良が進んだ。いいアンプを持っていなくても、ギターヒーローたちがかつて使っていたアンプを下手なレコーディングをするよりも手軽に再現する事ができる。


ただ、ここでもう一つ思う事がある。自分の持っているギターアンプの音がそんなに使えないものなのか?答えはNoである。自分が持っているアンプ、機材で音を作ってマイクを立ててもそれなりの音は鳴る。これが使えないか?と言われればNoである。そういう理由で、ギターアンプシュミレーターはほぼデモ用に一個、バンドル購入で勝手にくっついてきたものしか所有していない。


では、アンプシュミレーターのメリットとは?めたらやたらにこのようなおもちゃを増やす事には賛成できないが、時間の制約があるとき、デモ用にとりあえず録音しておきたいときには非常に役に立つ。また、ベースのように、家で大きい音を外に出せない楽器の場合は、単純なライン録音ではなく、DIを通してアンプリュミレーターで音を作るという選択肢ができる。

お金をかけずに音楽制作環境をととのえるには?

一番お金がかかってる環境に居る私が何を言っているのだろう?と思われるかもしれません。


が。。。。


よく、録音やミックスへのアドバイスをというコメントを求められるんですが、結局はお金がないだのと言い訳をされてしまうんですが、殆どの場合がお金ではなく、時間をかけてない!!が私の回答になります。


では、最低限の金額でその機材の準備をする方法を伝授しようではないか。


という訳で、これは絶対必要だろうーーーーっていう機材を書いてみます。


Logic X(恐らく音源が入ってるDAWでは一番安いし、チュートリアルビデオも出ている。アップルストアで使い方を習える)2万
コンピュータ(DAWの推奨する以上の環境に必ずしてください。推奨メモリ16GB)12万
オーディオインターフェイス(できれば安物を使わない。Apogee Oneまたは Duetとかいかがでしょう?あまり下位のものは使わない)5万
ヘッドホン(自然に聴こえるもの。例えばbeyerdynamic Pro 770とか)3−4万
マイク(ボーカル用にコンデンサーを一本)4-5万
ポップフィルター 数千円?
スピーカー(例 Yamaha HS50m+HS8S。サブウーハーなしは、低音が聴こえないため、m。MS50のペアは中古で探しやすい)
7万
ケーブル カナレなど
MIDI キーボード 中古で1万以下古くなければ最低限の機能でよし。鍵盤の数はお好みで


合計30万程度で基本セッティング可能です。
30万ぐらいなら、バイトで十分稼げる値段だと思います。

これだけでも十分に質が出せる音楽は作れるはずなんです。


上のリストをよりアップデートするならばどこに値段をかけるべきか?と問われた場合は、私はコンピュータと回答します。ということは、このリストのうち、最も値段が高いものはコンピュータであって、音楽機材ではないという事になります。普通の人が使用しているよりもよりスペックが求められますが、かつてはMac Pro(30万)くらいのスペックがないとDAWを使っての作業は困難でした。


それを考えると、随分制作環境を整える為の予算を削減できる状態になっていると思います。

マスタリングとはファイナルプロセスです!!

音楽を作って仕上げるまでの行程をいつか書いたとは思うけど、


作編曲及びメンバー集め(ミュージシャンの仕事)

レコーディング

エディティング(編集)

ミキシング(ミックス)

マスタリング(プリマスタリングと呼ぶ人も居る)

QC(クオリティコントロール

CDプレスやデジタル配信など


マスタリングは、オーディオ処理の一番最後のプロセスです。なので、マスタリングのスタジオへやってくるオーディオファイルは、ミックス後のものであることが想定されています。マスタリングのお仕事とは、トラック間のレベルマッチ、聞いて違和感がないように処理する事のほかに、CDのトラックオーダー、曲間の調整等を行うのが作業なのです。


ところがこのお仕事、非常に誤解が多いのです。音圧を上げる(上がる)のも仕事の一環ではあるのですが、適切に上げる為には3-6dBのルームがあることが望ましいのです。L2かなんかをマスタートラックに入れて音圧を既に上げちゃった音源を処理することは、、、やれって言われればやりますが、やっていいことは一つもありません。こちらでちゃんとしたリミッターをかけますのでやらないでください!!


数日前のクライアントさんで、インストのトラックのマスターをボーカルミックスより前にやって欲しいとかいう変なリクエストが来ました。マスタリングをした事がない方だったからか説明するのも時間を要したんですが。。。


楽器だけのトラックをマスターしてあとからボーカルを足しちゃうと、二つの違う行程のものが混ざっちゃいます。マスタリングの本来の目的である、音圧を調整し、全トラックが違和感なく聞こえるようにという事とは違う事になってしまいます。ボーカルだけ違う行程のものにするということは、カラオケみたいな感じになってしまうってことになります。


クライアントさんのご希望で、ボーカルなしのミックスとボーカル有りのミックスを送っていただき、ボーカルなしのものを同じエフェクトのセッティングでバウンスしてくださいと言われる事もありますが、これはあくまでも彼らが練習用かなんかに使うためのものであります。

音圧競争 Loudness War

「音圧競争」の記事や文献は結構沢山ある。有名なレコードのリマスター版が、どれだけ音圧が上げられ、同じレベルで聴いた時に(とは言っても売られているCDを一般の人が同じレベルで聴き比べるなんてことはわざわざしないと思うが)どれだけ音楽的要素の重要ポイントであるダイナミックスレンジが失われているかをわざわざ波形の写真をのせたり、You TubeにUPされているものまである。


音圧上げはそもそも、レコード会社がメジャーなCDのマスタリングエンジニアに強制し、商業的理由で便乗したおじいさんがたが始めたことではあるのだが、AESで音圧とセールスは相関性が全くないので、売れるレコードを作るのに音圧の高いマスタリングが必須というレコード会社の言い分は矛盾しているという主旨の内容が、有名マスタリングエンジニアより
発表されている。ここは本当にまっ二つに意見が別れていて、商業的理由で音圧を上げて、それを良いサウンドだ!と心からそう思っているかは別として言及するエンジニアと、音が大き過ぎていい事はないのだからよい音を作るべきだ!というエンジニアと両方居る。


私個人は、自分の1st Albumを作った頃は、自分は演奏家、作曲家、編曲家として関わったので実はすべて当時のエンジニアにお任せであった。また、音圧の高い、音の悪いCDを聴いて育ったので実を言うとリスナーとしては全く拘っていなかったのである。なので、音圧をどこまで消費者が意識しているかはあまり期待をしていなかったのだが。


アメリカでは結構有名な話だが、メタリカのアルバム"Death Magnetic"は、マスタリングエンジニアが関わったCD版が音が潰れすぎている。Guitar Hero(ゲーム版)の方がまだ音がいいと、マスタリングエンジニアを名指しでメタリカのファンが文句を言っているという文献まである。
http://www.nme.com/news/metallica/39816#2


相変わらずTV CommercialではL2を全てのトラックに自動的にさすという乱雑な処理がなされているので残念だが、せめて、CD版に関しては、もう少し音楽的なものが増えて行く時代がこれからくればよいのだが。

Audio Codec

エンコードという言葉の方一般になじみが深いのではないかと思われるが、エンコードは変換を加える行為、ここではオーディオ(特に音楽)についてなので
WAVやAIFFというフォーマットをエンコードし、最終的に消費者の元にとどくフォーマットであるmp3, AAC, Ogg, Quick Timeに変換(コンバート)する過程においてコーデックがデバイスとなり音声信号の変換を可能にする。説明するとややこしいのだか、コーデックというのはそのデバイスのことをさすのである。


Sonnox社の出している"Fraunhofer Pro Codec"というプラグインは、mp3, AACなどのフォーマット、ビット数の違いによりどのくらい情報が失われるかをシュミレーションし、試聴する事ができる。


フォーマットが"Lossy format" (mp3)や、Low bit rateにし、質を落とせば明らかに失われていることが試聴できる。失われた部分だけを試聴する事もできるという、ちょっとお節介で消費者としては知りたくないような機能までついている。


Sonnox Fraunhofer Pro-Codec Video


この、3:17秒当たりにLow Bit rateに変換すればするほどある特定の周波数領域でピークレベルを超え、クリッピングが起こっているのが紹介されている。クリッピングをしないようにゲインレベルを調節するため、右のゲインレベルを調節するボックスで、何dBか落としている様子がわかる。だいたい-0.5dB、時には1dBくらい落とさないとクリッピングレベルを超えてしまうが、試してみないとこればかりはわからない。

レコーディングへの準備

ミックスとマスタリングの違いがよくわからないという話はよく聞く。
ただ、これを説明しだすとトピックからズレてしまうのでその説明は省略させて頂く。


あるミュージシャンから。


彼らはドイツのとてもよさそうな感じのスタジオでレコーディングをしたのだが、Pro Toolsのセッションファイルは持っておらず、マスタリングされた後のオーディオしか手元にないという。当時は、配信サイトでバラ売りのみのつもりだが、そのマスターされたオーディオを更にマスタリングしていい音にしてアルバムを作れないかと案件であった。


簡潔に言えば、私たちができることはレベルマッチくらいで、マスター後のオーディオをマスタリングしてなんていうのは論外である。


こういう類のEmailには果たしてどこまで親切に、しかも自分自身の時間を使って説明するべきかなのか真剣に悩む。大抵の人は、問題を解決したくて聞いているのではなく、こちらが懇切丁寧に説明した後、その結論が思うようにならない事を、自分の準備不足で学習して次に成功するようになどといった嬉しい態度では返してくれないので、あっけに取られてしまう。


彼ら曰くだが、そのエンジニアの説明では、ミックスと同時にマスタリングをしているので、マスター前のステレオは渡せない。ミックスとマスタリングではまったくその行程や、考え方は本来は全く違うのだが、彼らのようなエンジニアを商売人と見れば理解できなくもない。Pro Toolsのセッションを保存する時間がないと言われたそうだが、このクライアントがどうお金を支払いしているかにもよると思うので、そのバジェットが合わなかった事も考えられる。


たいがいのスタジオでは、半年くらいはセッションファイルを消去せずに保存し、いつでもクライアントが戻って来てコピーが必要であればその時間給をエンジニアに払いさえすれば、セッションのバックアップをもらえる。が、このミュージシャンの説明が正しければそれもしないのだそうだ。私は、何故セッションを保存できるHDDをレコーディングに持参しなかったのか聞いたが、そんな事は頭にもなかったそうだ。


私ならばだが、クライアントがレコーディング経験がなさそうであれば、保存期限の話や、推奨するセッションのバックアップの方法をレコーディング前に提示するし、そして、求められればDVDなどのメディア(容量に限度があるが)へ保存してあげる事くらいは可能だと思う。DVDなどクラッシュしやすいメディアではなく、せめて外付けのHDDを推奨する。HDDの代金に、$100-200くらい余計にお金はかかるが、レコーディングへの費用、いや費用よりも、そこに集まったミュージシャンのレコーディングの時間、努力、情熱は後からは何をやっても取り返せないものである。レコーディングがそのときうまく行ったかどうか不安であったとしても私なら、しっかりとセッションをバックアップし、安全にもって帰る道を選ぶ。


自分自身のファーストアルバムのレコーディングはとても大変だったし、失敗も多かった。だからこそ、限度のあるバジェットをサイフの中から切り詰めてまで捻出する気持ちも理解できるし、何よりも、関わるエンジニアとしてできる努力は全て惜しみなくしている。バックアップの有無はクライアントの選択なので私たちがいくら推奨しても必要でないと言われればそれまでなのかもしれない。が、私は、セーフなバックアップを強く推奨する。