有名なソフト会社の出している音楽的に不自然なデモ

世の中にあまりにも、「海外でこう言われていたから」とおっしゃる方々が多いので、その海外や有名な会社が推奨している方法が音楽的ではない事もあるという事を発信したいと思う。


一つ目は、NI (Native Instrument)の出しているAuthentic Steel String Guitarという音源。


http://www.native-instruments.com/en/products/komplete/guitar/session-guitarist-strummed-acoustic/


リアル感を出す為にフィンガーノイズを演出するのを売りとしているのだが、下のサイトの一局目の音源-00:20あたりのフィンガーのノイズは現実的に考えてとても不自然な位置にある。ギターのベーシックなコードチェンジ、そしてリードギターアルペジオ、両方を考えてもこういったフィンガーのノイズは起こりえない。現実感の演出の為の機能なのに、非現実的な場所に入ってしまっている。フィンガーノイズのこの種の音は黒板をチョークでキーーとやったような感じの耳に痛い音域と近いので、この種のフィンガーノイズを入れるのは特に気持ちのよいとは思えないが、ましては現実的にありえない場所に入れる必要はどこにも見つからない。


もう一つはiZotopeという会社の出しているギタートラックの例。


https://www.izotope.com/en/community/blog/tips-tutorials/2015/how-to-clean-up-your-guitar-sound-after-recording/


この会社は逆にフィンガーノイズを音楽的な要素とはとらえず、消すことをデモとして出している。


1番目のトラックは、音作りの問題だと思うが、私が思うにソフトウェアシンセの音源でもここまで音の悪いのは聴いた事がない。ここまで音が悪いのであればノイズ処理というよりは演奏していて気がつかないものなのかと思うし、ノイズの音もディストーションギターとして音作りをするのはギタリストの重要な役割だ。レコーディング時にギタープレーヤーがその音で納得しているのであればそのまま残せばよいと思うし、音が悪いのであればコミュニケーションをしてその場で録音をし直すということも、演奏家が経験する事によって上達していくのである。それをノイズ処理によって人を納得させるという発想が私にはとても納得いかない。


2番目は音を伸ばし、減衰していく感じをノイズリダクションにより変えてしまう。このことにより、ギタリストが他のパートを録音時に聴きながら演奏していたとすれば、他の楽器とのバランスを変えてしまう可能性がある。そもそもそこまでヒドイノイズではないので処理する程のものでもないと思うし、処理をする事で音の太さを失うデメリットの方が大きい。


3番目は、リズムを刻むアタック音を「クリック」ととらえ、削除してしまっているのだが、ギタープレイヤーが演出している音楽的要素として認識していないという判断である。


クライアント間で意見は分かれるかもしれないポイントではあるが、音楽的要素を否定するものは少なくとも「デモ」としてはふさわしくないと思う。


3例とも元の音と比べ、良い要素までもノイズリダクションによって消されてしまっている。少なくともギタリストのクライアントであれば、これを納得するとはとても思えない。


もし、上記の三例を私がマスタリングのQCを担当し、チーフエンジニアに「非音楽的要素に値するノイズ箇所」という報告書を出せば、次の日から仕事はなくなる。