携帯電話の声の加工

映画Not Long At Night (http://not-long-at-night.com/)のポストプロダクションに関わらせて頂いているので、折角なので制作の話を少しずつ書いて行こうかと思います。


携帯に電話がかかってきて、主役の方が誰かと話すというシーンの、電話の相手の声を「携帯からかかってきた声」に聴こえるように加工してくださいという依頼がありました。


文字で書いても状況が分かり辛いと思うので、写真をUPします。(映画がまだ公開前で映画に使われている実際のものは公開を差し控えてほしいという事でしたので、写真はスタジオで勝手に撮ったものです)





写真ですが、男性が携帯電話で話をしています。その相手の声は私には聴こえません。しかし、映画であれば、その相手の声が聴こえてなければいけません。


もとのオリジナルの録音は、携帯電話から聴こえて来る声を録音したのではなく、恐らく普通に録音されたものでした。その声を、視聴者には、「携帯電話の電話の相手の声」として認識させなければストーリーが伝わりません。そこで、どういうテクニックを使ったかを軽く説明しますと、電話の声は、大変周波数が狭いです。そのため、LPFとHPFをかけます。それだけだとまだ携帯電話の声にはほど遠いです。


携帯の音声は皆さんご存知の通り、周波数が狭い事も原因ですが、ちょっと聞き取り辛い感があります。映画のシーンとしては、その声(台詞)がわからなかったら成り立たないので、ひたすら音質を落とせばよいという問題ではないので、そこでどうするかを考えたのですが、


上記の、LPF、HPFに加え、特定の帯域をブーストして少し強めに聴こえる帯域(音楽やアナウンスのように心地よく聴こえる声ではありません)を作ってみました。その他状況に応じて、コンプレッサーを少しきキツめにかけてみたりします。


本映画のシーンでは、主人公の女性の声より、電話の男性の声の方がだいぶ目立っていたので、Loをよりカットし(proximity effectと言い音の発信源が近ければ近い程低音が聞き取りやすいという原則があるのですが、この場合はその逆に遠くしたかった為、Loをよりカットしました)
、ボリュームを下げて少し遠くから聴こえているようにプロセスしました。


実際の携帯から聴こえて来る声に極めて近いかどうか?よりは視聴者が「携帯電話の声」と認識できるような加工をする事がこういったシーンでは重要になります。