マスタリングのレート その1

最近よく尋ねられるのがマスタリングのレートです。


M-worksもそうですが、私個人の場合、時間チャージをします。
マスタリングエンジニアによっては$75/song
とか、$70~/songとか、
1-5曲のとき、そして6曲以上の時と値段を分けていたり、
マスターのレートは本当に人によって様々です。


しかし、仕事の流れとして考えた場合、
クライアント側にもエンジニア側にもフェアなのはやはり時間チャージ
だと考えています。


時間チャージがクライアントさんに取っては、バジェットが不明瞭
だと思われても仕方がないのですが、
1曲当たりのチャージがどうしてフェアじゃないと私が
考えているのか、そこには理由がある訳です。



例えば、アルバム10曲をマスター、全て同じエンジニア
で似たようなスタイルの楽曲の場合、
やり直しがなくその日で完了させてしまう場合は、
私の場合は、ポップスなどの5分以内の曲で構成される
アルバムの場合はだいたい合計6時間くらいと考えています。
私のマスターのレートは、日米で分けているのですが、
米国内の場合、現在は、$50/hour、1アルバムあたり
順調に行って6時間と考えれば合計$300です。


最低限のレートですが、しっかり音は作っていますよ!ご心配なく。


まず、クライアントさんにとって曲あたりのレートが
フェアでないシチュエーションです。
例えば、アルバム10曲で、同じエンジニアがある程度
クオリティの高いミックスをしていた場合です。
最初に手を付けるのは、アルバムの代表曲。
Track 1か2が望ましいです。
1曲には45分〜1時間半かけてしっかり音を
作った後、他の曲が似たようなミックスが
あと2、3曲あれば、
その1曲目のエフェクトの設定を微調整するか、あるいは、
ほぼ設定をせずそのままバウンスできることもあるので
(1曲目をしっかり音を作っていればという前提の話ですが)
3曲を1時間あるいは1時間半程度でできてしまう事に
なります。そうなると、
曲当たりのチャージがフェアではないということなのです。


一方、エンジニアにとって曲レートがフェアではないシチュエーション
ですが、
セクションの多い長い10分~20分の曲が4曲あったとします。
その場合、マスターするのに、アルバム10曲と
ほぼ同じ時間がかかってしまうこともあります。というのは、
複雑な構成の曲が予想され、各セクションごとにマスターしなければ
ならない事があり、一曲あたり平均して普通のポップスの3曲分
くらいの時間と労力がかかってしまうこともあります。


もう一つは、ミックスエンジニアが複数関わっているような
コンピレーションアルバムなんかの
場合ですが、元のミックスの音色が違うと、一曲、一曲別々に音を
作っていかなければならず、ほぼ同じ設定で2、3曲という
選択肢がなくなってしまいます。
そのため、上記の普通の10曲のアルバム
とはかかる時間が異なってしまいます。
全楽曲の音質が完全に同じようには本当に難しいです。

だからと言って、全楽曲を1曲1時間半とかかけること
がクライアントさんの意向的にもできない事の方が殆どなので、
ある程度のところで音を決めなければなりませんが、
同じミックスエンジニアが手がける、音質の似たアルバムの
場合と比べ、時間がかかることは事実です。


1曲計算のレートは、見た目が明瞭ではあるのですが、
そのレートがどこから決まるのかということを考えれば、
とても不明瞭な計算になるのです。


時間チャージではなく、曲当たりのレート設定のエンジニアさん、
一曲いくらではなく、いくら〜とか、
分数で値段を分けるというレートを設定している事がよくある
のですが、そういう理由だからだと思われます。